看護物語

もう一度お母さんに味わってもらいたい~家族の思いを叶える看護~

2011.11.01

「もう一度お母さんに味わってもらいたい…」

~家族の思いを叶える看護~

長男家族と6人暮らしだった80歳代のAさん、秋に4階病棟に入院されました。
大腸癌のエンドステージで、状態は落ち着いていましたが、医師より余命1~3カ月程度であることが家族に告げられていました。
長男夫婦からは、本人が苦しまない方法で看取りたいとの希望がありました。
お嫁さんは熱心にお見舞いに来ており「お母さんは私のことを本当の娘のように可愛がってくれたんです。だから、お母さんに恩返しができたら…」という思いを話して下さいました。
そこで私たちはお嫁さんと、Aさんらしくお看取りするにはどういった方法があるか話し合いました。
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その中でAさんの好きなものを食べさせてあげられたら、という希望が聞かれました。                                
Aさんは食事ができる状態ではありませんでしたが、後日、お嫁さんにAさんの好きなウナギとくず餅のたれを用意していただきました。                               
お嫁さんは涙ぐみながらたれのついた綿棒をAさんの口に持っていき、「お母さん、ウナギだよ、おいしいね」と声をかけていました。
大好きな懐かしい味に、Aさんも穏やかな表情を浮かべ、私たちにはAさんが笑っているように見えました。
このことをきっかけに、ご家族は「Aさんにもっと何かできないか」という思いを持たれ、Aさんは自宅に一旦帰り家族みんなでクリスマス会を楽しむことができました。
それから1か月後の朝、Aさんは安らかに永眠されました。
新人の私たちは、終末期ケアの経験もなかったため、このようにAさんと家族が最後まで共に笑顔で過ごすことが出来るとは思ってもみませんでした。
そして、看護師としてまだまだ出来ることがある!そう思わせてくれたAさん、ご家族に感謝いたします。

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4階病棟