看護物語

犬に会えたワンダフルな1日!

2010.05.01

clip_image002余命三ヶ月のAさん。家族の希望で本人には未告知でした。しかし、本人は自分の病気について質問してくることはなく、死について悟っていたと思われます。

入院時からベッド上での生活が数ヶ月に及び、妻が24時間付き添いをしていました。元々入院嫌いだったAさんは、自宅への一時外出を希望。医師、看護師付き添いの元自宅へ一時外出することとなりました。

外出には、自宅に行くことの他にもう一つ、Aさんにとって楽しみなことがありました。元々愛犬家だったAさんには長年連れ添っていた愛犬がいましたが、今年はじめに他界。入院を機に、大好きな犬たちと触れ合うこともなく闘病生活を続けていたAさんに、近所の方が犬と触れ合う機会を作ってくれたのです。しかし、当日予定が合わなくなってしまい、結局犬と触れ合うことなく外出先から帰ってきました。

そんな様子を知った病棟スタッフが、自分の飼っている犬とAさんのご対面を提案。数日後に、Aさんをベッドごと病院の玄関口までお連れし、犬との対面が実現しました。久しぶりに犬と触れ合うAさんの目からはキラリと輝く涙が・・・

長い療養生活、病室ではなかなか見せることの無かった優しい表情を浮かべ、一緒に写真を撮ったり、餌を与えるなどして幸せそうに戯れていました。その姿を見た奥様も、一時の介護疲れを忘れたかのような優しい表情でAさんを見守っていました。看護師が「また機会があったら遊べるといいですね。」と声をかけると、「また会えるのかなぁ」とポツリつぶやいたのが印象的でした。

その数日後にAさんは息を引き取りました。急性期病棟では、医療の提供が優先されがちとなります。様々なことが制限され、窮屈を強いられる入院生活の中で、『その人らしく最後まで人生を全うして欲しい』その気持ちを無駄にすることなく、御家族、病棟スタッフが協力して関わることのできた事例でした。

患者さんや御家族の笑顔は、私たちスタッフの喜びにもなり、忙しい日々の中でも患者様ひとり一人に寄り添い求めていることを一緒に実践していく。その大切さを改めて実感することができました。今後この経験を、これからの看護に生かしていきたいと思います。